ひかくこうげい
皮革工芸
動物の皮の利用は人類が誕生して間もなくから行われていましたが、“革(かわ)”加工品(動物の皮から毛を取り除き、なめして柔らかくしたもの)となるまでには長い時間が必要で、古代エジプトで発掘されたサンダルが最初期の革加工品と言われています。
日本は食生活において動物よりも植物の利用に傾いていたこともあり、革の利用は遅く、奈良時代(710~794年)の正倉院宝物に武具や革帯、漆皮箱などが見られるのがもっとも古い例としてなります。その後、主に武具に革加工品が多く使われるほか、江戸時代(1603~1867年)には革羽織や煙草入れなど精巧な製品も見られ、長い年月をかけて技術が発展してきました。
動物の皮はそのままでは腐敗し、乾燥すると硬くなるため、加工の前に柔らかくする“鞣(なめ)し”という作業が必要となります。なめしの方法には、古(いにしえ)から伝わる「植物タンニンなめし(渋なめし)」と19世紀に開発された化学薬品を用いる「クロムなめし」があり、“なめし”の施された革を原材料に、皮革工芸品は作られます。
動物の皮革を加工する技法には、縫製、編み組み、接着、成形などがあり、また装飾技法には染色、彩絵、鍍金 (メッキ) 、型打ちなどさまざまなものがあります。
台東区には、長年受け継がれてきた伝統的な加工技術のみならず、型押しした革を幾重にも貼り重ね、水平方向に漉(す)く独自の技法で「漉き模様革(スキモレザー)」を開発(特許取得)、美しい階調の変幻自在の線模様、および皮革ならではの立体的な感触を持つ製品を作り出している工房があります。