みこし
神輿
神社の祭礼で、神霊(しんれい)の御幸(みゆき)が行われるクライマックスに、その乗り物として氏子たちに担がれる神輿は“祭りの華”とも言われます。奈良時代の天平勝宝元(749)年、東大寺大仏建立に際して上京した宇佐八幡(うさやちまん)神の輿が記録上に残る最古のもので、神輿は長い歴史を持ちます。
神輿はそれぞれ特徴的な形を持ち、さまざまな意匠の彫刻や装飾金具、飾り紐(ひも)などがあしらわれていて、神輿ごとに独自の美しさがあります。その製作には多岐にわたる技術が必要とされ、専門の職人たちが分業して製作する点も神輿づくりの特徴です。木材から切り出して神輿の各部位へと成形していく工程、彫刻を施す工程、漆を塗る工程、神輿を装飾する金具や錺(かざり)の金属加工や飾紐(かざりひも)の製作、彩色、箔押(はくお)しなどなど、さまざまな工程で木地師(きじし)、彫師(ほりし)、錺師、塗師、箔職人、彩色師(さいしきし)、組紐師(くみひもし)、鍍金(ときん/めっき)師など、多くの職人がかかわり製作されています(1つの工房で全行程を一貫製作することもあります)。
各工程に経験と熟練の技を必要とし、丹精込めて手作業で製作された各部品を最後に組み立て、飾りを取り付けてバランスを整えてはじめて神輿の完成となります。
浅草の三社祭をはじめ、祭りが盛んな台東区では、神輿を製造する工房が多くあり、新規の神輿製作だけでなく、修理・修復も重要な仕事として請け負っています。