伝統工芸品

Traditional crafts in Taito city

すずり

硯は書道の道具として、中国では紙・筆・墨とともに文房四宝の一つとされ、古来より工芸品としても珍重されてきました。日本の書道の歴史は、弥生時代に大陸から漢字が伝来したことに始まりますが、日本で文字が書かれたと見られる銘文が遺(のこ)されたのは、5世紀頃のことです。
日本の書道は、仏教が伝来し、飛鳥時代(592~710年)の聖徳太子、また奈良時代(710~794年)には聖武天皇によって写経が奨励され、全国に写経所が設けられ分業で経典を写経するなどしたことで、大きく発展しました。

硯には石製のほか瓦や陶磁器、金属などでできたものがあります。日本では、古墳時代からしばらくは多くが陶製でしたが、中国で石硯(せきけん)が主流となるのに伴い、平安時代(794~1185年/1192年頃)中ごろから石製の硯が多く使用されるようになり、石硯が日本で作られるようになったとされます。
中国の石から製作される硯(唐硯:とうけん)が書斎に飾る文化があることから形のオリジナリティや美術品のような美しさが追求されたのに対して、日本で発展した硯(和硯:わけん)は、箱に収納されることから人目に触れる機会がなく、実用性が重視された作りになっています。
今では硯の多くが石製で、石巻の雄勝石(おがついし)、長門の赤間石、近江(おうみ)の虎斑石(とらふいし)などが日本の硯石(すずりいし)として有名です。

硯作りの職人は多くの場合、原料の石の産地に住んで製作しておりますが、台東区の職人は自ら「製硯師(せいけんし)」を名乗り、「唐硯」と「和硯」を問わず、さまざまな石を用いて、夏目漱石の硯の再現や、中国の伝統的な硯の再現も行うなど、さまざまな硯を製作しています。硯石には希少なものも多く、採石場にも足を運び、調査や採石をすることもあるとのことです。

職人紹介

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