伝統工芸職人

Traditional Craft men & women in Taito city

看板彫刻

坂井 保之

福善堂坂井看板店の三代目である坂井保之さんは、看板彫刻師です。
現在は息子の智雄さんと共に福善堂坂井看板店を営んでいます。

看板彫刻の歴史は非常に古く、飛鳥時代に仏教が伝わった時。お寺の扁額(へんがく)の文化が伝わったことが始まりと言われています。(扁額とは門戸や室内などに掲げる横長の額のことです)
板に書いて長年のしように耐えられるようにした看板は室町時代末からと言われ、江戸時代には店舗商業の発達とともに最も有力な宣伝手段としてさまざまな工夫が凝らされるようになり、広まっていきました。
現在は、お寺の看板、お店の看板、噺家が真打になった記念などに贈られる名札などとして使用されるほか、開店祝い、結婚祝い、還暦祝い、新築祝いなどの招木札としても人気があります。

坂井さんが職人になって60年の間にさまざまな変化があったと言います。
坂井さんが職人になったのは東京オリンピックの数年前でしたが、オリンピックが終わった頃から、プラスチックの看板やネオン看板が次々に登場し、なかには、木の看板づくりを止め、鞍替えする看板屋もいたそうです。

坂井さんも時代に流されたいと思ったこともあったそうで、そのとき、父親に「まだ彫りができていないのに新しいことをするなんて無理だ」と言われ思いとどまりました。
しかし、その後のバブルを経て世の中が落ち着き、木の看板の良さがまた見直されている今、看板彫刻をやり続けてきてよかったと思っているとのことです。

これまで坂井さんが手がけた中で一番印象に残っているのは、平成2年におとり様(鳳神社)の4メートル×80センチの看板2枚を作成したことで、看板のサイズが大きく、大仕事だったので完成したときは感慨深かったそうです。

また、谷中銀座商店街の商店看板を50軒分作ったという大仕事もありました。
「お店はそれぞれ業種が違い、洋風な柄が入った看板などもあり、いつもの仕事とまた違う楽しさがありました。看板彫刻と聞くと日本風の看板と思われがちですが、このようにお客様の注文次第でさまざまな看板が作れます。」と坂井さんは言います。

福善堂坂井看板店
住所:台東区松が谷3-4-1
TEL:03-3841-5801