伝統工芸職人

Traditional Craft men & women in Taito city

貴金属加工

田中 康司

「錺職 匠和」の田中 康司さんは、貴金属の装飾品を制作する錺職人です。
オーダーメイドで装飾品の制作をしています。

田中さんが職人になったのは、祖父が錺職だったからだそうです。
幼い頃から、祖父に「お前は手先が器用だね」と言われて育ったので、自然に錺職の道を選んだとのことで、「父は別の仕事をしていたので、祖父は私に跡を継いでほしかったのかもしれません。」と田中さんは言います。

錺(かざり)職は、金・銀・銅などの金属の加工技術をもつ職人のことです。
金属の装飾品の歴史は古く、弥生時代の出土品の中にも見られます。金属の装身具は一時あまり作られなくなりますが、江戸時代になり装飾品の人気が高まり、平安時代から続く銀(しろがね)細工の技法を受け継いだ、錺職が誕生しました。飾り職は明治以降、神社仏閣の建物や、御神輿などの錺を作る職人と金や銀などの貴金属で、指輪やペンダント、イヤリングなどの装飾品を作る職人に分かれました。
田中さんは、開業当時は、着物の帯留めを主に作っていたとのことですが、現在はペンダント、イヤリングなどのアクセサリー類が中心だそうです。

貴金属の装飾品の工程は、まず地金屋から銀など金属を板に加工した原料を仕入れます。
そして、貴金属の装飾品のデザインを考え、金属の板からパーツを切って部品を製作。部品をろうづけして形ができたら、細かな細工がある場合は彫り師に依頼します。最後に、宝石などの石留めをして磨きをかけたら完成です。

元々、田中さんは、錺職のなかでも、部品をろうづけして形を作る「寄せもの」の仕事を主に行っていました。寄せものの難しさは、貴金属には何種類もの金属が使われていることがあり、種類によって溶ける温度が違うので、その差を計算しながらスピーディーに作業をする必要があることです。また、石留めをする際は石の繊細さを考慮して止めるため、扱いに注意が必要です。

以前は、こうして「寄せもの」の仕事を主に行い、その後の工程である「彫り(装飾品の表面に模様を入れる)」は彫り師に頼んでいた田中さんでしたが、最近は彫り師自体が減っているので、自分でもできるように彫りを学びました。
また、バブルなどの景気がよい時代は、自分でデザインを決めて商品を作って問屋に卸していましたが、今は流通の仕組みも変わったので、お客さんから直接オーダーメイドで受けることが多いそうです。

「最近は錺職を辞めてしまう職人が多いのですが、私は技術の幅を広げながら錺職を続け、多くの方にその存在を知ってもらいたいと考えています。今後は機会を作って、一般の方にも錺職の技術を伝えていきたいです。」と田中さんは言います。

 

錺職 匠和
住所:台東区元浅草4-7-8
TEL:03-3841-8291
営業時間:明確には決まっていない
定休日:土・日・祝