えどはけ
江戸刷毛
江戸刷毛は、伝統工芸品の職人にとって大切な道具です。漆器に漆(漆の木の樹液)を塗るための漆刷毛や、表具師が愛用(あいよう)する経師刷毛をはじめ、木版刷毛、染色刷毛、人形刷毛など、様々な伝統工芸品と結(むす)びつき、多くの職人から信頼を得ています。伝統工芸品を作るための「江戸刷毛」はやがて伝統工芸品そのものになりました。
<歴史>
刷毛は物を塗るための道具として、大変古くから作られてきましたが、記録としてさかのぼれるものは今から約1200年前の平安時代で、キビの毛や麻の毛で作られた、漆を塗るための刷毛について書かれています。今から約300年前の江戸時代半ばに発行された「万金産業袋」(江戸時代の商品に関する本)には、当時の色々な刷毛が図入りで紹介されており、その中に「江戸刷毛」の名前が確認できます。
<特徴>
江戸刷毛は現在7種類あり、表具や料理用、蒔絵用などに使われるほか、古い芸術作品の修理など、職人が使う道具として信頼を得ています。素材として人毛や馬、鹿、山羊などの獣毛やシュロなどの植物の繊維が使われています。「ムラ塗りが出ない」「コシがある」優れた刷毛の命は毛先といわれ、使い道にあわせて厳しい目で素材が選ばれます。職人の繊細な刷毛さばきに大きな影響を与えるクセや脂分のある毛は、毛先を整えるとともにクセ直しと脂分を除くことを丁寧に行っており、刷毛を作る時間の多くが使われるほどの、大切な工程です。
<匠の技のポイント>
経師刷毛、染色刷毛、人形刷毛、木版刷毛、塗装刷毛および白粉刷毛の場合
① 金櫛(金属製の櫛)で毛を均一に混ぜ合わせる。
② もみがら灰を使い、獣毛の火のし(熱でしわをよばす)と毛揉みをする。
③ 締木(物を強く押し付ける道具)などを使って毛を固め、毛と板を重ね合わせ密着させる。
<伝統的な材料>
本体:人毛、獣毛、ツグやシュロなどの植物繊維
柄(持ち手):ひのき、竹またはこれらと同じような材質のもの
<台東区>
台東区には、刷毛を手作りで製作している工房があります。今も、確かな技術と伝統が守られています。