えどさしもの
江戸指物
指物の「指す」は「差す」とも言い、ものさしできっちり寸法を測り、少しのくるいもなく木を組み合わせて、家具や箱などを作ることを言います。
指物は、金釘が1本も使われていません。釘を使わず、木材に凹凸の切り込みを彫り、ぴたりと組み合わせることで、しっかりと木と木をつないでいます。
<歴史>
指物の歴史は、今から約1200年前の平安時代(794〜1185/1192年)からで、京都で貴族たちの家具が作られるようになりました。それが京指物の始まりです。指物を作る職人(指物師)が生まれたのは今から約600年前の室町時代(1336〜1573年)以降で、茶道の発達とともに茶道に使う箱類が作られるようになり、広がりました。
今から約400年前の江戸時代(1603〜1867年)には江戸幕府により、全国から集められた職人によって、江戸(現在の東京)に職人の町ができました。そこから江戸指物が生まれました。
京指物(京都の指物)は公家、貴族文化から生まれ、優雅で美しい家具が作られたのに対し、江戸指物は将軍家や大名家などの武家が使う実用的に作られています。
<特徴>
江戸指物の大きな特徴は、自然の木目を大切にしているところです。
たんすや鏡台、引き出しなど、色々な作品があります。芸術作品にまでなっている物もありますが、そのほとんどは、家庭で毎日使われるための家具です。
とても丈夫に作られ、色味も渋く仕上げているのは、長く毎日使うことを考えているからです。使えば使うほど美しくなるのが江戸指物です。
<匠の技のポイント>
①「木取り」・・木目を見ながら、どの木を使うか、いくつ取れるか決めて、切る。
②「組み手加工」・・板と板がぴたりと合うように、凹凸の溝(ほぞ)を作る。
③「仮固め・組み立て」・・仮に組み、確認。問題がなければ、かなづちなどを使い、組み立てる。
④「外部仕上げ」・・作業途中の傷を取り、ぴたりと合わせるため、カンナをかけて表面を削る。
⑤「うるしぬり」・・透明なうるしをぬって、みがく作業を繰り返し、つやを出す。金具をつける。
<伝統的な材料>
桑、キハダ、けやき、桐、杉および同じ材質を持つ木材/天然うるし
<主な産地>
江戸指物の産地としては台東区が特に盛んで、今もなお多くの職人が、たんすや机、いす、棚などの家具類や日用品を、材料選び、道具、組み立て方法など、昔ながらの伝統の技と工夫を引き継ぎ、作り続けています。