伝統工芸職人

Traditional Craft men & women in Taito city

手拭

川上 千尋

川上 千尋さんは染め絵手ぬぐいの職人です。
息子さんと共に、ふじ屋を運営されています。

染め絵手ぬぐいは、和紙の型と糊を使う注染染めという伝統的な手法で作られた、手ぬぐいです。
手ぬぐいの歴史は古く、平安時代に神事の際にまとう装身具として使用されていたといいます。庶民にまで広がり始めたのは鎌倉時代以降であり、前掛けなどにして手を拭くのに使われ始めたのは室町時代以降と言われます。

手ぬぐいは、はちまきにしたり、汗を拭いたりして使用するイメージが強いですが、実は、飾って楽しむ文化が昔からあったことが、江戸時代に文化人、大名、町人までが一堂に会する手ぬぐいの品評会が開かれたという記録が残されていることからわかります。このように、さまざまな立場の人が集まることは、当時の社会背景を考えると非常に珍しいことだといえます。
当時は、連(同じ趣味をもった仲間)やお祭り、町内会などでお揃いの手拭いを作り、それを仲間の印としていました。

川上さんは、染め絵手ぬぐいの職人だった父の影響で、20歳で職人になりました。
初めて自分の描いた絵が手ぬぐいになったときのことは、今でもよく覚えているそうです。

現在、一般的に販売されている手ぬぐいの多くはプリントです。
しかし、ふじ屋は、すべてオリジナルのデザインで手染めであることにこだわっています。キレイに発色するように、通常より多くさらしている布を使用しています。何度もさらすことで不純物を取り除くことができ、キレイな染めが表現できるからです。

染め絵手ぬぐいは浮世絵と同じ手順で作られていて、分業制です。ふじ屋では、川上さんと息子の正洋さんが下絵を描き、下絵が完成したら型屋さんに依頼し、原画にそって彫刻刀で彫って型を作ります。型は色によって使い分けるため、1枚の手拭いをつくるのに2~3種類の型が必要です。型ができたら次は染屋さんに染めを依頼。一度染めたら布が縮むので、元の幅に戻して反物にして1週間~10日ほど置き、糸の寄りを戻してから、次の型の染めを行います。
信頼できる型屋さんと染め屋さんが連携することで、手ぬぐいが完成します。

ふじ屋では店舗での販売を行っていますが、オーダーのご注文も多いそうです。結婚式、お店の開店、周年記念、受賞記念、誕生日祝い、法要などその用途はさまざまです。
また、海外のイベントに出店する機会も多く、これまでシカゴ、イタリア、デトロイトなどを巡ってきました。現地の方にも手ぬぐいは好評とのことです。

また、仕事のやりがいを感じるのは、お客さんに喜んでもらえたときとのことで、「デパートでときおり展示会をするのですが、うちの古い手ぬぐいをもってきて「今でも使えるのよ!」と言ってくれる方に出会うと、長く使ってもらえてありがたいなと思います。」と川上さんは言います。

染絵てぬぐい ふじ屋
住所:台東区浅草2-2-15
TEL:03-3841-2283
営業時間:10:00~18:00
定休日:木曜日

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