とうきょうちょうきん

東京彫金

彫金ちょうきんとは、金属工芸きんぞくこうげいの一ひとつで、道具どうぐを使つかって金属きんぞくに彫刻ちょうこくを施ほどこす技わざのことです

今いまから約やく400年前ねんまえの江戸時代えどじだいに横谷宗珉よこやそうみんが始はじめたといわれており、江戸彫金えどちょうきんと呼よばれていましたが、現在げんざいでは「東京彫金とうきょうちょうきん」といわれるようになりました。

＜歴史れきし＞

金属工芸きんぞくこうげいのなかでも彫金ちょうきんの技術ぎじゅつは長ながい歴史れきしがあり、今いまから約やく1500年前ねんまえの古墳時代こふんじだいの終おわり頃ごろに伝つたえられたとされます。帽子ぼうしや指輪ゆびわ、かんざしなどの装身具そうしんぐ、馬具類ばぐるいなど当時とうじの遺物いぶつを見みると、毛彫けぼりや透すかし彫ぼりなどの基本的技術きほんてきぎじゅつが定着ていちゃくしていたことが分わかります。

今いまから約やく900年前ねんまえの平安時代後期へいあんじだいこうきに武士ぶしが力ちからを持もつと、彫金ちょうきんは刀剣とうけん・かぶと・よろい・金具かなぐに装飾そうしょくとして施ほどこされることが多おおくなりました。今いまから約やく400年前ねんまえの江戸時代えどじだいになり、平和へいわな世よの中なかが続つづくと、刀剣とうけんは実用性じつようせいを重おもんじるものからデザインの面白おもしろさを競きそうものへと変化へんかし、精密せいみつな小型こがたの彫金ちょうきんの技術ぎじゅつが完成かんせいします。

＜特徴とくちょう＞

今いまから約やく330年前ねんまえの元禄期げんろくき以降いこう、横谷宗珉よこやまそうみんが墨絵すみえの筆ふでの勢いきおいをそのままにたがね(硬かたい物ものを加工かこうする道具どうぐ)で表現ひょうげんした片切彫かたぎりぼりの技法ぎほうを生うみ出だしました。宗珉そうみん自身じしんは武家ぶけよりも町民ちょうみんとの交まじわりを好このんだことから、 “町彫まちぼり”と呼ばれ、その自由じゆうな発想はっそうと斬新ざんしんなデザインは、刀剣とうけんよりもむしろきせるや根付ねつけなどの生活用品せいかつようひんに広ひろがりを見みせるようになり、新あたしい流行りゅうこうを生うみ出だしました。

＜匠たくみの技わざのポイント＞

①地金じがね取とり：地金じがね(金属きんぞくを保存ほぞんしやすいように固かためたもの)に罫書けがき（加工かこうの基準きじゅんとなる線せんや穴位置あないちなどを書かく作業さぎょう）し、台切だいきりはさみ(工具こうぐ)で切きり取とる

②なまし：地金じがねが赤あかくなるまで熱ねっしてからゆっくり冷さまし、柔やわらかくする

③下絵書したえがき・本図書ほんずがき：水洗みずあらいした地金じがねに鉛筆えんぴつで下絵したえを書かき、その上うえから雁皮紙がんぴし（植物しょくぶつから作つくられる和紙わし）または蝋紙ろうがみ（ろうを染しみ込こませた紙かみ）を当あて正確せいかくに書かき写うつす

④彫刻ちょうこく：技法ぎほうにあったたがね(工具こうぐ)を使つかい手作業てさぎょうで行おこなう

⑤仕上しあげ：名倉砥なぐらとぎ（砥石といし）、重曹じゅうそうを使つかって磨みがく

＜伝統的でんとうてきな材料ざいりょう＞

金きん、銀ぎん、銅どうおよびこれらの合金ごうきん

＜台東区たいとうく＞

主おもに器物うつわもの、置物おきもの、装身具そうしんぐ、神仏具しんぶつぐなどに施ほどこされる東京彫金とうきょうちょうきんは、素材本来そざいほんらいの持もち味あじを引ひき立たて、格調かくちょうと重おもみのある製品せいひんを生うみ出だしています。台東区たいとうくには東京彫金とうきょうちょうきんの工房こうぼうが多数たすうあります。