えどもくはんが
江戸木版画
およそ1200年前には木版を利用した蛮絵鳥獣や草花などを丸い形に描いた図形がほどこされた衣裳が奈良県にある東大寺の正倉院に保管されているなど、日本の木版技術は長い歴史を持っています。
<歴史>
今から約400年前の江戸時代の初めに浮世絵(絵画の種類のひとつ)が誕生し、木版画は大きく発展します。はじめは墨一色であったものを、朱色などで着色し、しだいに複雑な着色をほどこすようになり、きれいな色の版画となります。江戸木版画の技術は、今日まで受けつがれてきました。
<特徴>
江戸木版画は、絵師(絵を描く人)がまず薄い和紙に墨一色で原画(もとの絵)を描き、次に彫師(木を彫る人)が原画をはった板に小刀(工具)で彫り(多色刷りの場合、1色つき1枚の色版が必要)、すり師(絵の具をつけた版木に紙をあてて、絵を写し取る人)が版木にそれぞれの色の顔料をぬり、ばれん(顔料を紙へと転写させるためのすり道具)で紙の背面より力を入れてこすって仕上げます。絵師、彫師、すり師がそれぞれの長年の技を使い、一体となって美しい木版画の表現をつくり出します。
<匠の技ポイント>
① 絵師:版下となる原画を描き、描いた原画から起こされた墨一色の校合ずり(色版用の版下として複数枚すられたもの)に、色ごとに色を決めて色版の指定をする。
② 彫師:版下(原画)をもとに版木刀などをもちいて彫り、最後は見当(版画にするときに正確な位置に置くために付ける印)をきざんで、色の数だけ版木を彫り分ける。
③ すり師:水にといた絵の具を刷毛で版木にぬり、「ばれん」で紙の背面から力を入れてこすり、むらなくすり上げる。ずれないよう正しく合わせて色を重ねてする。
<伝統的な材料>
版木(おもに桜材)
和紙(おもに「こうぞ」(クワ科の植物)を原料にする)
顔料(墨、丹、黄、紅、草、紫、藍、薄紅、鼠)
<台東区>
江戸木版画の技術により、浮世絵は広く知られ、江戸(現在の東京)を代表する文化となりました。その技術は、今もなお受けつがれており、台東区には彫師とすり師の技を一度に見られる工房があります。