江戸表具

絵えや書しょを掛軸かけじく・巻物まきもの・額装がくそうに仕立したてる伝統的でんとうてきな技術ぎじゅつを「表具ひょうぐ」と言いいます。

表具ひょうぐによって絵えや書しょの美うつくしさや価値かちが高たかまり、守まもられます。

 

＜歴史れきし＞

仏教ぶっきょうとともに中国ちゅうごくから日本にほんへと伝つたわったのが、表具ひょうぐの始はじまりとされます。表具ひょうぐは、神社じんじゃや寺てらが多おおい京都きょうとで発達はったつしました。江戸表具えどひょうぐは、今いまから約やく330年前ねんまえの元禄期げんろくきに江戸えど(現在げんざいの東京とうきょう)のお屋敷やしきの増築ぞうちくにともない、表具ひょうぐの職人しょくにんが江戸えどに出でてきたこと、絵えや書しょが一般いっぱんの人ひとにも身近みじかなものになったことなどを理由りゆうに、盛さかんになりました。

 

＜特徴とくちょう＞

表具ひょうぐには、掛軸かけじくや巻物まきものなどの軸物じくもの・屏風びょうぶ、和額わがく、ふすまなどがあります。なかでも掛軸かけじくは全体ぜんたいに丈たけが短みじかめで、色調しきちょうは一色いっしょくや色合いろあいがあっさりしているところが、江戸表具えどひょうぐの特徴とくちょうといえます。

表具ひょうぐの材料ざいりょうは和紙わし、裂地きれじ（織物おりものや反物たんものの生地きじ）、水みず、のりとシンプルですが、それだけに細こまやかな紙かみの扱あつかいや刷毛はけさばきには高たかいい技術ぎじゅつが必要ひつようです。

 

＜匠たくみの技わざのポイント＞

☆軸物じくもの（掛軸かけじく、巻物まきもの）の場合ばあい

①本紙ほんしを引ひき立たたせるような素材そざいを選えらぶ

②しわにならないよう、素材そざいの厚あつさ、腰こしの強つよさが均等きんとうになるようにする

③刷毛はけでなでてから打刷毛うちはけで打うち込こみ、十分じゅうぶんになでつける

④素材そざいを正ただしく切きり、のり止どめした後あと、本紙ほんしを中心ちゅうしんとしてのり付づけする

 

☆骨下地物ほねしたじもの（屏風びょうぶ、和額わがく、ふすま）

①下張したばり：骨縛ほねしばり、打うち付つけ、みの張ばり、みの押おさえおよび袋張ふくろばりとし、最後さいごに上張うえばり

②削付けずりづけ：かまち(周まわりの枠わく)が平行へいこうになるよう調整ちょうせいする

③屏風びょうぶの羽根付はねづけ：強つよい和紙わしを使つかい、ゆるみがないよう、それでいて開閉かいへいがきつすぎないようにする

 

＜伝統的でんとうてきな材料ざいりょう＞

裂地きれじ、表装紙ひょうそうし、裏打紙うらうちし、上張紙うえはりがみ・下張紙したはりがみ、骨ほね・ふち、でんぷんのりなど

 

＜台東区たいとうく＞

台東区たいとうくでは、古ふるい書物しょもつや建物たてものなど文化財ぶんかざいの修復しゅうふくをする職人しょくにんや、職人しょくにんを指導しどうする職人しょくにんなどがいて、今いまも確たしかな技術ぎじゅつと伝統でんとうが守まもられています。