つげぐし
つげ櫛
櫛は、髪をといて髪型を整えたり、髪を飾ったりする道具です。
つげ(つげ科の木)で作られた櫛のことを「つげ櫛」と言います。昔から、つげは櫛の材料として良質であったため大事にされてきました。つげはとても貴重で、今では鹿児島県など栽培される地域は限られています。
<歴史>
日本では、櫛は今から約13000年前の縄文時代から使用されていました。そのころの櫛は、動物の骨や角などに彫刻をしたものや、木製のもので、髪を飾るためのさし櫛でした。当初櫛は神様に捧げられる神聖なものでしたが、一般の人に広く使われるようになったのは、今から約400年前の江戸時代からといわれます。
<特徴>
江戸時代の終わり頃、女性が色々な髪型にするようになり、また歌舞伎役者や相撲力士などの髪を結う床山など、髪結いをする職人が増えると、つげ櫛もその目的に応じてさまざまな種類のものが作られました。60もの工程を経て作(つく)られるつげ櫛は、髪につやが出て静電気が起きにくいなどの特徴があり、非常に丈夫で長持ちするので、一生ものとして使用できます。
<匠の技のポイント>
①切ったばかりの板をまっすぐにし、いぶしてあくを抜く
②自然乾燥で4年寝かせる(硬くて良い木なので乾燥に時間がかかる)
③荒削り:櫛の大まかな形を成型、サメの革を使ったやすりで櫛の目の間を少しずつ削り、歯の角を落としていく
④金属のやすりで櫛の目の間を少しずつ削っていく
⑤磨き込み:目の間を滑らかに磨いていく(歯の下側・真ん中など、順番に磨いていく)
<伝統的な材料>
つげ サメなどの動物の革や金属などでできた8種類のやすり
<台東区>
台東区を含めた周辺地域には、櫛職人が集まっていた地域が何カ所かあり、なかでも池之端黒門町周辺(現在の上野1~3丁目付近)は、つげ櫛職人が多く集住していた地域でした。現在も台東区には、日本国内でも数少ない、つげ櫛を一貫して手作業で製作できる職人がいます。