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すず
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はんだやメッキなどに使われる金属「錫(すず)」の加工技術は、およそ1200~1300年前の飛鳥・奈良時代(592~710年、710~794年)、茶の伝来とともに伝えられたといわれ、奈良県にある東大寺の正倉院(しょうそういん)には瓶子(へいし)型の容器のほか数点の「ろくろ挽き」の御物(ぎょぶつ)が納められています。古くから神酒徳利(みきどくり)、花器など神具や仏具として用いられたり、貴族や武士階級にも酒器や茶器などとして用いられたりしてきました。

錫を用いて、酒器や茶器などさまざまな製品を作る職人のことを”錫師”と呼びますが、「ろくろ」に据えて鉋(かんな)で削る「ろくろ挽き」により成形を行う職人を特に“錫挽き物師”ということもあります。
錫師は江戸(関東)よりも大坂を中心とした上方(関西)方面に数多くいたといわれます。かつて薩摩(さつま)藩が産出量の多い錫鉱山を所有し、その錫が大坂で売買されていたためと考えられています。18世紀後半の職人を描く『今様職人尽百人一首(いまようしょくにんずくしひゃくにんいっしゅ)』には、江戸の錫師の仕事場も紹介されていることからも、江戸でも少ない人数ながらも錫師が活躍していた様子が見て取れます。

溶かした錫を型に流し込んで成形する「鋳込み」では行えない細部の成形や光沢出しを行う「ろくろ挽(び)き」が錫細工の製作工程の要(かなめ)で、熟練の技と経験を要する作業です。表面への加飾(模様付け)では、「鎚目(つちめ)打ち」や「絵付け」、「着色」、「荒らし」といったさまざまな手法を用いて、製品に仕上げていきます。

錫で作られる製品は耐蝕性に優れ、熱伝伝導が良い割に保温性があり、また水をおいしくするともいわれ、酒器や茶器として親しまれています。現在は他にも花器や文具などとしても使われます。

■匠の技のポイント
  • 錫を熱して溶かしたものをセメントで作った型に流し込んで成形(鋳込み)
  • 荒削り用の鉋や光沢を出すための鉋を使い分け、ろくろで回しながら鋳込みではできない曲線や細部を成形する(ろくろ挽き)
    ※形によってはろくろを使わず金鎚(かなづち)で成形する場合もある。
  • 徳利や瓶子などの口先がすぼんでいる器の場合、上部と下部を個別の鋳型に鋳込み、それぞれ別々に鉋で削って成形する。その後に上下の合わせ目の錫本体を溶かして接合する(焼き合わせ)
  • 金鎚でたたいて表面に凹凸を加飾(模様付け)する(鎚目打ち)
  • アルコールで溶いた松脂(まつやに)で絵を描き、薄い硝酸液に浸けて腐蝕。松脂を苛性(かせい)で洗い落とし絵柄を浮き上がらせる(絵付け)
  • 苛性ソーダにつけて表面をざらつき感のある手触りに仕上げる(荒らし)
  • 漆に顔料を混ぜ漆刷毛で塗り広げ、余分な漆をムラのないように拭き取る拭き漆の技法(着色)
■原材料・素材

銀、銅、ビスマスを含む純度97%の錫合金

■特殊な道具

ろくろ、用途に応じた何種類もの鉋

■工房紹介

錫光(すずこう)
中村圭一
埼玉県川口市源左エ門新田300-31
048-296-4028
https://www.takumi-suzukou.com/