江戸衣裳着人形
3月3日の桃の節句、「ひな祭り」の主役である「ひな人形」は、江戸衣裳着人形の代表的な人形の一つです。「ひな」の起源は古く、「源氏物語」にも記述があるほどです。はじめは「ひな遊び」という、公家などのごく限られた人々の遊び道具だったそうです。一方で、古くから新生児の「魔よけ」として枕元などに天児(あまがつ)や這子(ほうこ)といった人形を置く慣習があり、それらが結びついて「ひな人形」になったといわれています。
もともと人形の発祥は京都であったといわれます。江戸時代(1603~1867年)の参勤交代で人形師やその弟子が江戸に技術を伝えました。江戸での人形作りが飛躍を遂げたのは、5代将軍徳川綱吉の元禄年間(1688~1704年)に「十軒店(じゅけんだな:現在の中央区日本橋室町付近)」で雛市(ひないち)を開設したことに始まるといわれています。雛市はたいへんな賑わいを見せたといい、この頃にはすでに広く庶民にも普及していました。
江戸衣裳着人形には、ひな人形以外にも、五月人形である武者人形や、尾山人形、歌舞伎人形、市松人形、御所人形などがあります。市松人形は、江戸時代中期に爆発的な人気を博した大坂の歌舞伎役者「佐野川市松」の若衆姿を再現した人形が由来です。
江戸衣裳着人形は、わらなどの胴体に顔や手足を付け、衣裳を着せ付けて完成させるもので、百を超える工程を一つ一つ丹念に仕上げていきます。
江戸衣裳着人形の特長は、江戸時代から受け継がれた技術・技法をもとに、現代的感覚を生かした美しさや可憐(かれん)さにあるといわれ、現在に至るまで広く愛され続けています。
- 胡粉塗り:頭・胴体・手足に胡粉(ごふん:貝殻を焼いて砕いた白色の顔料)で5回以上塗る工程
- 面相描き;目ざらい、または描き目をしたのち、面相筆(めんそうふで)で眉毛描きおよび口紅さしを行う
- 胴組み:針金や布等を用いて手や足を組みつける
- 着せ付け:本仕立て衣裳または和紙で裏打ちした衣裳を、綿や木毛(もくもう:木材を糸状に切ったもの)で肉づけする
桐、稲わら等、絹糸(スガ)、または人毛、絹織物、綿織物または麻織物
松菊(しょうぎく)
菊地之夫
葛飾区青戸3-41-3
03-3602-1452
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