江戸木彫刻
木彫刻の歴史は古く、遠く飛鳥時代(592~710年)にまでさかのぼります。一説によれば6世紀の仏教伝来とともに始まったといわれ、平安時代(794~1185/1192年)には、仏教の影響を受け多くの仏像が彫られました。室町時代(1336~1573年)に入ると仏像を必要としない禅宗が全盛期を迎え、仏像彫刻の代わりに社殿や寺院の柱・欄間(らんま)などに装飾を施す建築彫刻が急速に発達しました。江戸時代(1603~1867年)初期の彫刻を施した代表例に日光・東照宮の陽明門が挙げられます。広く知られる左甚五郎(ひだりじんごろう)は、桃山時代から江戸時代にかけて活躍した名士です。
もともと建築彫刻は大工が手掛けていましたが、江戸時代に彫刻を専業とする堂宮彫師(どうみやほりし)、社寺彫刻師(しゃじちょうこくし)が現れました。仏像を彫る仏師が鑿(のみ)と小刀を使い分けていたのに対して、堂宮彫師、社寺彫刻師たちは主として鑿と彫刻刀の両方を用いる仕事が中心でした。
明治時代(1868~1912年)になり、西洋建築が現れ始めると、社寺や仏具の装飾に携わっていた職人たちも、その文化を取入れて西洋彫刻に挑戦しはじめました。有名な国会議事堂の彫刻には、木彫刻師たちの創作品が施されており、今でも見ることができます。
神社仏閣の多い台東区では、神仏彫刻をはじめ幾多の木彫技術が今もなお受け継がれ、創り続けられています。木彫刻の職人は、鏨、彫刻刀、鉋(かんな)、鋸(のこ)、木槌(きづち)、玄能(げんのう)などを使用しています。とりわけ鏨と彫刻刀は種類が多く、普通でも合わせて200~300本ほど取り揃えています。これらの道具を駆使して緻密にして躍動的で立体感あふれる彫刻物が作られています。
- 構想・下絵
作品の構想を練り、彫刻の輪郭を取るための絵を紙に作図する。立体彫刻の場合は四面の図柄を厚肉彫刻、その他の場合は表面の図柄を使う。下絵も木彫刻師が行う。 - 墨付け・木取り
原木や大きな木に作品の大体の大きさを墨付けし、下絵の寸法に合わせて鋸で切り、図付けがしやすいように鉋で削り上げる。木表、木裏、木目などに気を付けながら行う。 - 図付け
材料に下絵を直接素描きするか、複写紙で写しとる。 - 荒ごしらえ・荒彫り
不要部分を鋸・鏨などで削り取り、木槌と鏨で作品をおおまかに彫り進める。荒彫りで作品の良し悪しが決まるため、最も多くの時間をかける。 - 中彫り
小作りともいう。鏨、彫刻刀などでほとんど形が出来上がるまで彫る。薄肉とその他の場合は中彫りから始める。 - 仕上げ彫り
形を整えた後、細部まで丁寧に彫る。木彫刻は仕上げの時、彫刻刀のみで仕上げる。
欅(けやき)、檜(ひのき)、楠(くす)、桜、檜葉(ひば)など
宗舟
横谷光明・横谷昭則
台東区寿4-12-2
03-3845-0458
http://so-syu.jp/index.html