江戸文字
江戸時代(1603~1867年)に幕府の公文書などの記録に書く「御家流(青蓮院流)」の書体を元に、歌舞伎、相撲、寄席、千社札など、それぞれの世界の味わいを醸し、発展・派生した書体の総称で、大きく四種に分かれます。活字とは違う魅力で現代でも様々な場面で使われています。
- 『勘亭流』 歌舞伎文字とも言い、岡崎屋勘六(おかざきや かんろく・1746~1805年)によって創られたと伝えられています。
- 『相撲字』 取組の「顔觸れ」や「番付」に使われ、番付版元・根岸家代々(根岸流)から、現在は行司さんが書かれています。
- 『寄席文字』 元はビラ字と言い、紺屋・栄次郎によって創られた文字。二代ビラ辰から橘右近(たちばな うこん・1903~1995年)に伝わり、現代人にも読みやすい様に工夫され、現在は『橘流寄席文字』として、落語定席ほかのタイトル・大看板・めくり等に使われています。
- 『江戸(千社札)文字』 梅素亭玄魚(ばいそてい げんぎょ・1817~1880年)千社札題名「田キサ」は、錦絵や千社札などの図案や書、意匠に才能を発揮して活躍。その書体は、以降「田てう」「市場豊」「福志ん」ほか、千社札交換会『東都納札睦』の書家代々「太田櫛朝」「初代 高橋藤」「しま米」「二代 高橋藤」「鈴木本和」と続き、勘亭流の「二代目・荒井三禮」から、現在は「橘 右橘」が主筆、「奈可”瀬」はその弟子として筆耕しています。千社札・半纏の衿字や代紋・提灯・手拭など、様々な分野に使われています。
書き方から加護字(籠字)とも言い、牡丹字・髭文字なども江戸文字に含まれます。
■伝統的な素材・材料
筆(大・小)、墨、紙(薄美濃・和紙・洋紙)、木板
■工房紹介
永瀬博久