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えどししゅう
江戸刺繍
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江戸刺繍

さまざまな色糸を用いて布地の表面、あるいは表裏の両面に図案を表現する刺繍。日本では、飛鳥時代(592~710年)に中国から仏教が伝来した際に、金銅仏とともに刺繍による仏像、いわゆる「繍仏(しゅうぶつ)」が数多く作られました。現存する最古の刺繍作品は、奈良県・中宮寺に伝わる国宝「天寿国曼荼羅繍帳(てんじゅこくまんだらしゅうちょう)」で、推古天皇が聖徳太子の死を悼んで妥女(うねめ:宮中の女官)に作らせたものといわれています。

平安時代(794~1185年/1192年頃)には、公家のいで立ちである男性の束帯(そくたい)や女性の十二単(じゅうにひとえ)などに刺繍が施され、華やかさを競い合うようになります。さらに安土桃山時代(1573~1603年)には、刺繍のみで図案を表現する「主体性刺繍」だけでなく、染めや箔、絞りに刺繍を入れて模様などを表現する「相互性刺繍」が増えていき、さらに装飾的になっていきます。
江戸時代(1603~1867年)には、経済力をつけた町人階級が衣類に刺繍を施し、豪華で高価な着物を次々と生み出したため、幕府は取り締まりを強化したほどです。再三に渡る贅沢の禁止にもかかわらず、江戸の繁栄とともに江戸刺繍は発展を続けました。江戸時代に隆盛を極めた技術は今日まで受け継がれています。

日本刺繍には京風、加賀風、江戸風がありますが、江戸刺繍の特色は図柄を置くときに、空間を楽しむような刺繍の入れ方をする点にあるといえます。
江戸刺繍は機械刺繍ではなく、「すべて手作業で繍加工したもの」です。職人は色とりどりの糸を使い、自分で太さや撚り(より:ねじり合わせること)の甘さなどを調整しながら糸を撚り、精密画を描くように緻密に一針一針、丹精を込めて仕上げていきます。割りぬい、菅(すが)ぬい、相良(さがら)ぬいその他、ぬい方・刺し方は基本40種、変わりぬいを含めると300種ともいわれる多彩さに加え、赤だけで20色にも及ぶといわれるほど繊細で多彩な色彩感覚も要求されます。豪華絢爛な刺繍には、職人の魂が、まさに手仕事のなかの手仕事ともいえる地道な作業とともに込められているのです。

■匠の技ポイント

多様な繍(ぬ)い方、色彩の糸を駆使し、すべて手作業で一針一針、生地に繍加工

■伝統的な原材料・素材

刺繍糸に絹糸(平糸、撚糸〔よりいと〕)、本金糸、本銀糸、平金、平銀。繍下地に絹織物、麻織物

■工房紹介

小室縫紋店
小室輝夫
江戸川区江戸川1-30
03-3670-6554
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e032/shigotosangyo/jigyosha_oen/dento/kougeisya/komuro/gaiyo.html