印章彫刻
印章とは、木や角(つの)、石などに文字や模様を刻み、印肉で押すものです。その発祥は紀元前4000年前、メソポタミア文明とされています。その後、中国に伝播し、漢時代に最も発達しました。日本へは飛鳥時代(592~710年)に遣隋使を通じて中国のさまざまな文化とともに渡来しましたが、実際に使われるようになったのは、701年の大宝律令の制定により官印が用いられるようになった以降のことであると言います。
機械で生産されることが主流となった現在でも台東区には、あくまで手彫りにこだわり、また自然木によるオリジナルの小枝印鑑を考案し、実用新案を取得している職人もいて、桜や椿、竹、茶、ドウダンツツジなどの、小枝を使った印材(印章の材料)に文字だけでなく干支や動物、似顔絵などの絵柄を彫ったユニークな印章を作っています。この印章は、10年間寝かせて乾燥させた印材を使うことによる自然木の質感と、一つ一つ手彫りされた温かみが魅力となっています。
■技のハイライト
- 10年置いて乾燥させた木を印章の長さに切り整える
- 研磨剤(ガラスなど)を敷き、印材の押す面をその上で擦って表面を平らにする
- 平らにした面全体に朱墨を塗り、墨で文字や絵柄を書いていく
- 文字や絵柄の部分が残るように周囲を印刀で削っていく
(落款などで文字を白抜きにする場合は、文字の部分だけを削る) - 字や絵柄のまわりをキレイに整えていく
■伝統的な素材・材料
印材(10年寝かせて乾燥させる)、朱墨
■特殊な道具
篆刻(てんこく)台(だい)(印刻台ともいい、木を固定する道具)、印刀(印章専用彫刻刀)
■工房紹介
伊藤印房
伊藤睦子
台東区千束1-19-4
03-3873-0489
http://www.ito-inbo.com/instanthp/page06.html